「うちは紹介と昔からのつながりで回っているから、ホームページはとりあえずあればいい」。もし、そう考えているなら、今年発表された調査を一度見てほしいです。読んでいて、その前提だけで回し続けるのは少し危ういと感じました。今回は葬儀社のWeb集客について、公開されている事例と調査データを調べて整理してみます。
結論から言うと、僕は葬儀社のWebを「比べられて勝つ」ための道具とは考えていません。いざというときに思い出してもらい、何かが起きる前にも相談してもらうための入口です。そのために、Googleマップの情報、電話の入口、事前相談の入口、相談した後の連絡の4つを整えます。
約9割が、相見積もりを取っていない
まず、いまの遺族がどうやって葬儀社を決めているか。鎌倉新書が2026年5月に発表した「第7回お葬式に関する全国調査」が参考になります。直近2年以内に喪主(または喪主に準ずる立場)を経験した40歳以上の2,000人に聞いた調査です。
葬儀の事前準備を「していなかった」と答えた人は63.8%。業者を決めた時期も「亡くなった後」が最多でした。さらに、業者を自分で決めた1,575人のうち、見積もりを1社からしか取らなかった人と、見積もりを取らなかった人を合わせると87.1%になります。
つまり、自分で業者を決めた人の約9割は、相見積もりを取らずに1社で決めています。鎌倉新書は、その背景に時間的・精神的なゆとりのなさがあるのではないか、と見ています。この調査では、相見積もりを取らずに決めた人が多かったんです。
じゃあWebは要らないのか。僕の見方は逆です。相見積もりを取らずに決める人が多いからこそ、必要になったときに思い出してもらえる接点を、看板や口伝えとは別にも持っておきたいと考えています。
もうひとつ、見ておきたい数字があります。国民生活センターが2026年6月に公表した資料では、葬儀サービスに関する相談は年間900件前後で推移していて、2025年度は917件でした(2026年3月末までに登録された分)。そのうち「高価格・料金」に関する相談は52.6%です。「一日葬は約30万円」というチラシを見て依頼したら約80万円の契約になった、という事例も載っています。
Googleマップの対策を続けた、横浜の葬儀社の話
公開されている事例をひとつ紹介します。支援会社が2023年2月に行ったインタビュー記事で、横浜市港北区の和光葬儀社と、代表取締役の渡邉智史さんが紹介されています。記事によると、2020年7月からGoogleビジネスプロフィール(Googleマップに出るお店の情報)の対策を続けていたそうです。
それまでに試してきた施策も、けっこう幅広いです。渡邉さんは、バスの広告や車内アナウンス、チラシ、役所や郵便局の掲示板、看板、駅前の広告、そしてGoogleのリスティング広告(検索結果に出る広告)まで試したと話しています。
記事に載っている順位表では、「神奈川 葬儀」「横浜市 家族葬」などが圏外から1位になったとされています。アクション数についても「対策前月比で1年後約267%UP」と書かれていました。ただ、検索した場所などの測り方や、元の件数は記事からはわかりません。実際の相談件数や売上を示す数字でもありません。
僕が注目したのは、順位よりも渡邉さんの話のほうです。取材当時、事前相談がかなり増えてきていて、土日は必ず問い合わせがあると話しています。さらに、入電が増える中で社内体制を強化しないと取りこぼしが起きるのでは、という懸念まで口にしていました。
取材記事からは、どんな人が相談してきたのかまではわかりません。それでも、さっきの調査では63.8%が事前準備をしていませんでした。何かが起きる前に相談してもらえる接点をつくる。ここに葬儀社のWebの大きな役割があると僕は考えています。
チラシで電話相談を案内したら、約2.5倍に
もうひとつ、船井総合研究所の葬儀経営コンサルティングが公開しているコラムに、こんな事例がありました。ある葬儀社が「電話相談はこちら」と誘導する内容をチラシに入れて折り込んだところ、電話相談の件数が約2.5倍に増えたそうです。社名や期間、元の件数は書かれていないので、ひとつの例として読んでください。
この事例はチラシだけの打ち出しでした。コラムでは、既存会員へのDM、ホームページのトップ、会館の外に置くタペストリーでも同じ打ち出しをそろえる形が提案されています。
この事例だけで、急いでいる人の行動まではわかりません。ただ僕なら、急いで相談したい人が電話番号を探さずに済む形にします。葬儀社のサイトで、問い合わせフォームは目立つのに電話番号が小さい。そんな状態なら、先に直したいところです。
相談を受けた後に、静かに離れていく
同じコラムに、もっと気になる話が載っていました。事前相談や会員制度に入ってもらっても、そのまま施行につながらないケースが増えているそうです。背景として、複数の葬儀社から相見積もりを取る人が増えたことが挙げられていました。ただ、増えたことを示す集計は載っていません。
対策として紹介されているのが「相談後追客」です。相談してくれた人に後日連絡して、不明点が残っていないかを確かめる。無理に契約や入会を迫らず、確認とフォローに徹するのがポイントだと書かれています。ある葬儀社では、当日入会に至らなかった11組から4件の施行につながったそうです。この例も、社名や期間は書かれていません。
Webの成果を「問い合わせ件数」だけで見ていると、この部分がまるごと見えなくなります。問い合わせは通過点で、ゴールではないんですよね。
事例を読んで、僕が大事だと思った3つのこと
調べた事例を参考に、僕が勧めたいことを3つに整理しました。
1つめは、急ぎの人とまだ先の人で入口を分けることです。今すぐ葬儀社が必要な人と、まだ先の準備として調べている人とでは、知りたいことも動き方も違います。急ぎの人には電話番号を、まだ先の人には事前相談の入口を。トップページで最初に2つへ分けておく形を、僕なら勧めます。
2つめは、相談の後を放っておかないことです。Webで相談を集めた後、連絡や記録を誰がどう回すか。外の力を借りるとしても、担当と流れは先に決めておきたい部分です。
3つめは、続けるかどうかを判断する期限を決めておくことです。渡邉さんは、施策を始めたら大体1年ほど試して、続けるかどうかを判断していると話しています。すぐ効果が出る施策もあれば、1年後に出る施策もある、とも話していました。感覚でやめたり始めたりするより、最初に期限を決めておくほうが判断しやすくなります。
鹿児島の葬儀社がやるなら、この順番
鹿児島県の資料では、令和6年10月1日現在の高齢化率は34.2%で全国13位です。全国の29.3%より5ポイント近く高く、高齢者人口は約52万4千人です。この数字だけで自社の今後の依頼件数まではわかりませんが、県外で暮らす家族がスマホで「鹿児島市 葬儀」と調べる場面も考えておきたいところです。
僕なら、こう進めます。
①Googleビジネスプロフィールを埋める。電話番号、実際に対応できる営業時間、会館の写真。電話の受付時間と会館で対応できる時間が違うなら、その違いも書いておきます。無料で始められて、地図から電話をかけてもらえる入口です。ここが空いたまま広告を出すのは、もったいないです。
②スマホの1画面目に、入口を2つ置く。「今すぐ電話する」と「事前に相談する」。指で押しやすい大きさで並んでいるか、まず自分のスマホで開いて確かめてみてください。
③料金は、含まれるものと別料金を書く。国民生活センターは葬祭業の団体に対して、サービス内容を詳しく説明し、見積書を渡して正確な請求金額を伝えるよう要望しています。サイトでも、総額の目安と一緒に何が含まれて何が別料金かを書いて、相談する前に料金の条件を確かめられるようにしておきます。
④相談を受けたら記録して、後日の連絡を希望するか聞いておく。希望があれば、その時期と方法で確認の連絡をします。売り込みは要りません。不明点が残っていないかを聞くだけです。
⑤記事を書くなら、困りごとから。鎌倉新書の調査で「葬儀で困ったこと」の最多は「お布施の相場・マナーがわからない」でした。次いで「葬儀の知識やマナーがわからない」「遺影にふさわしい写真がない」「訃報連絡をする相手・範囲がわからない」と続きます。自社の紹介より先に、こういう疑問に答える記事を置いておく。まだ依頼先を決めていない人にも届く入口を、僕ならつくります。
まとめ
僕は、葬儀社のWebを比較で勝つための道具とは考えていません。まだ何も起きていない人と、先につながっておくための入口です。まずはGoogleビジネスプロフィールを開いて、電話番号と営業時間、会館の写真が今の状態と合っているかを確かめてみてください。
ホームページはあるのに事前相談が入らない。そういう状況なら、一度サイトを見せてください。電話の入口や相談の入口のどこで人が止まっていそうか、一緒に探します。
ここも気になるかも
Googleの口コミは、こちらからお願いしていいですか?
お願いすること自体は問題ありません。Googleのポリシーで禁止されているのは、割引や品物などの見返りを渡して口コミを集めること、満足してくれた人だけを選んで頼むこと、投稿を強要したり内容を指定したりすることです。葬儀の場で直接言いにくければ、後日お渡しする書類や連絡に一言添える形が自然だと思います。
料金表は、どこまで細かく載せたほうがいいですか?
載せられる範囲は、できるだけ載せたほうがいいと僕は考えています。国民生活センターの資料でも、表示を見て依頼したら想定より高い契約になった事例が並んでいます。総額が出しにくいなら、プランに含まれるものと別料金になるものだけでも書いて、相談する前に料金の条件を確かめられるようにしておきます。
Webをやるなら、施設まわりの営業はもう要りませんか?
要らなくはないです。船井総研のコラムでは、施行全体の約6割が高齢者施設からの紹介という葬儀社の例が紹介されています。営業の相手は主にケアマネジャーで、まずは実際に依頼をもらった施設から訪問していくのが現実的だと書かれていました。紹介を受けた人が、Webで会社を確かめることもあります。どちらかに寄せるより、どちらから来た人も必要な情報を確かめられるようにしておきたいところです。