求人のバナーやSNSの告知画像を、AIでパッと作れるようになりました。でも、作ったあとで手が止まる。「これ、勝手に使っていいのかな」と。著作権のことがよくわからなくて、結局使わずに終わってしまう。そういう方に向けて、使う前に何を確かめればいいのかを整理しました。
AIで作った画像は、利用条件と他人の権利を確かめながらであれば、仕事に使えます。ただし「商用利用OK」のサービスで作ったからといって、その画像に問題がないことまでは保証されません。確かめるのは、入れる素材、出てきた画像、広告としての中身の3つです。僕なら、背景や挿絵のような「雰囲気を添える画像」から始めて、文字や日付、金額は人の手で入れます。
「AI画像の著作権、なんか怖い」と感じる理由
AI画像の話になると、「学習に使われた元の絵の著作権は大丈夫なの?」という疑問がまず出てきますよね。ここは、分けて考えると整理しやすくなります。
文化庁が2024年3月15日に公表した「AIと著作権に関する考え方について」では、AIが学習する段階と、生成した画像を使う段階を分けて整理しています。使う側が気にするのは、後者です。
生成した画像が著作権侵害になるかどうかは、昔からある2つの物差しで判断されます。既存の作品の表現の特徴が読み取れるほど似ているか(類似性)。その作品をもとに作られたか(依拠性)。この2つです。
画風や作風が似ているだけ、つまり共通しているのがアイデアの部分だけなら、著作権侵害にはなりません。ただ、「誰が見ても真似とわかるレベルでなければ大丈夫」というほど単純でもないんです。具体的な表現がどこまで共通しているかは、個別に判断されます。
もう1つ知っておきたいのが、使う人が元の作品を知らなくても、問題になりうるということ。AIの学習内容なども関わってくるからです。有名人やキャラクターの名前を入れなかったから安全、とは言い切れません。
今日からできる、一番簡単な使い方
一番取り組みやすいのは、Canva(ブラウザで使えるデザインツール)で背景だけをAIに作らせる方法です。
Canvaの編集画面で「素材」を開き、作りたい画像の説明を入力します。生成の種類を選べる画面が出たら、画像を選んでください。表示は契約やアカウントによって変わるので、見当たらないときはCanvaのヘルプで確認してみてください。
入力する指示(プロンプトと呼びます)は、たとえばこんな感じです。
「地域のお店の催しに使う、横長の告知用の背景。淡い緑と白で、紙を重ねたような質感。左側には見出しを置ける余白を残す。人物、文字、会社のマークは入れない。」
ポイントは最後の一文です。文字やロゴは、あとから自分で入れる前提にしておく。AIは文字を崩したり、見覚えのないマークを描き込んだりすることがあるからです。背景を選んだら、確認済みの日時や料金、自社のロゴをCanvaで重ねて仕上げます。
広島県福山市でAI導入などを支援している株式会社Omitも、2026年1月7日の記事で同じような流れを紹介しています。建築会社の経理事務の募集を題材に、GoogleのGemini(「Nano Banana Pro」という画像生成モデル)で求人画像を作り、Canvaで会社名やロゴを足す。修正の目安は5〜10分程度とのことでした。あくまで制作例の紹介で、この画像で応募が何件来たかまでは書かれていません。
実際にやるとどう変わるか
一番変わるのは、費用の考え方です。
写真素材サイトのPIXTAで通常の写真を1枚買うと、Lサイズで税込3,630円、XLサイズで税込5,500円です(2026年9月時点)。使い道によっては別のライセンス料がかかる場合もあります。
Canva Proは、日本向けの料金ページで1人あたり年間11,800円でした。この中にAIの画像生成も含まれています。1枚ずつ買う発想から、年額の中で何枚も試作する発想に変わる。これは大きい変化だと思います。
ただ、注意が1つ。有料プランでも、AI機能を無制限に使えるわけではありません。Canvaには複数のAI機能で共通の利用枠があり、どの機能がその枠を使うかは、プランや機能、生成の品質によって変わります。Proの標準的な画像生成は共通枠の対象外ですが、高品質の生成などは枠を使いますし、対象外の機能にも使いすぎを防ぐ制限があります。「年額払えば何でも作り放題」ではないので、画面の残量表示も見てください。
それと、料金だけで比べると判断を誤ります。生成して、選んで、直して、確認する。この時間も含めて、使える1枚にいくらと何分かかったかで比べるのが現実的です。
気をつけること・限界
「商用利用OK」と「権利の問題がない」は別の話
CanvaのAI利用規約では、条件を守れば生成した画像を仕事に使うことを認めています。ただし、入れた素材や出てきた画像を確認する責任は、使う側にあります。ほかの人が似た画像を生成する可能性も書かれているので、自分だけのものになるとも限りません。
Canvaの素材集にある写真やイラストを組み合わせるなら、そちらは素材ごとのライセンス(利用条件)を確認します。生成した背景と、あとから足した素材は、別々に確かめてください。
参考画像を入れる前に、権利と個人情報を確かめる
ネットで見つけた写真を、そのままAIに読み込ませるのはやめておいてください。自分で撮った写真でも、写っている人の肖像やプライバシー、個人情報の扱いは確認して、必要なら了解をもらってください。個人情報保護委員会も、生成AIに個人情報を入れるときは利用目的などを確認するよう注意を呼びかけています。僕なら、試作の段階ではお客さんの名前や社員の顔、社外に出していない資料は入れません。
求人画像は「実物と違う印象」を作らない
求人で特に気をつけたいのが、実在しない社員や職場を、本物の写真のように見せる使い方です。求人の情報では、うそや誤解を招く表示が職業安定法で禁じられています。「AIで作ったイメージです」と小さく添えても、見た人の誤解が解けるとは限りません。「未経験OK」「残業少なめ」といった言葉も、実態と合っているかを先に確かめてください。
海外の判決を、日本での安全の根拠にしない
2025年11月4日、英国の高等法院で、写真素材大手のGetty Imagesが画像生成AIのStability AIを訴えた裁判の判決が出ました。学習に関する直接の著作権侵害の請求は、Getty側が途中で取り下げています。AIモデルそのものを侵害したコピーとみなす請求は、退けられました。
一方で、一部の古いモデルが生成した画像にGettyの透かし(ウォーターマーク)が出たことについては、商標権の侵害が認められています。しかもGetty側の2026年8月の開示によると、著作権の争点については2026年11月に控訴審が見込まれているそうです。
英国の、しかもまだ決着していない裁判です。「AI画像は合法と決まった」という話ではないので、日本で使う画像は日本のルールと各サービスの利用条件で確かめてください。この件から学べるのは、見覚えのないロゴや透かしのようなものが写り込んでいたら、その画像は使わないということです。
僕はこう使ってます
この記事のサムネイルも、実はAIに作らせたものです。ただ、写真のような画像を生成したわけではありません。AIに、線と文字だけの図をコードで描かせています。SVGという、図形を数値で指定する形式です。
この形にしている一番の理由は、何が描かれているかを自分で全部説明できるからです。線の1本、文字の1つまで中身を確かめられます。もちろん、それだけで他社のマークに似ていないことまで保証されるわけではないので、できあがった図は目でも確認します。そのぶん、写真のような華やかさはありません。実物を見せたい場面は写真、雰囲気を添えたい場面は図、という使い分けでいいと思います。
会社で取り入れるなら、いきなり「全部AIで作ろう」としないほうがいいです。まず社内向けの告知やSNS用の1枚で試す。そのうえで、確認の手順ごと自社のやり方として決める。この順番なら、あとで困りにくいと思います。
正直に言うと、画像を作るより、確認のほうが手間はかかります。規約を読む、似た画像がないか探す、文字と数字を直す。ここを省けないなら、最初の数回だけでも誰かと一緒にやるほうが早いかもしれません。
まとめ
AI画像を仕事に使うなら、入れる素材と、出てきた画像の両方を確かめる。まずはこれだけ覚えておいてください。最初の1枚は、背景だけをAIに作らせて、文字は自分で入れる。そこから始めてみてください。
AIで画像を作ってみたけど、広告や求人に使っていいのか迷っている。そんな状況なら、作った画像と載せる予定の場所を見せてください。確かめるべき点と、人の手で仕上げる範囲を一緒に整理します。
ここも気になるかも
Canvaの無料プランでもAI画像生成は使えますか?
使えます。無料プランにも、月ごとに回復するAIの利用枠があります。ただ、何枚作れるかは使う機能によって変わるので、画面の残量表示で確認してください。頻繁に作るならProも選択肢ですが、Proでも機能によっては利用枠を使います。
有名人やキャラクターの名前を入れなければ安心ですか?
それだけでは判断できません。名前を入れなくても、既存の作品に似た画像が出てくることはあります。僕なら、許可を確認していない人物や作品を題材に選ばないうえで、出てきた画像も目で確かめます。
AIで作った画像は、自分の著作物になりますか?
商用利用できるかどうかと、著作権で守られるかどうかは別の問題です。文化庁は、人の創作的な関わりがどの程度あるかで判断する考え方を示しています。指示を入れてボタンを押しただけで、必ず自分の権利になるとは限りません。
AIで作ったロゴは商標登録できますか?
AIで作ったという理由だけで、登録できなくなるわけではありません。人が作ったロゴと同じように、登録の要件を満たすかが審査されます。ただし、Canvaの素材集の画像は商標に使うことが制限されています。会社のロゴのように長く使うものは、採用前に弁理士などへの相談も検討してください。
社内だけで使う画像なら、確認はいらないですか?
社内で使うというだけで、確認がいらなくなるわけではありません。法律上の例外が使えるかどうかは、目的や使い方で変わります。社内用に作った画像をあとで外に出すときは、そのタイミングで改めて確かめてください。