「これから新しくSEO始めても、もう意味ないですよね?」——最近、こういう相談をよく受けます。AI Overviewが検索結果の上に出るようになって、ChatGPTで調べる人も増えた。実際、メディア系のサイトはアクセスが落ちている。じゃあ地方の中小企業が今からSEOをやるのは無駄なのか。結論から言うと、無駄じゃないです。むしろやる意味は増えています。ただし、5年前と同じやり方ではほぼ効きません。
「SEOはオワコン」という空気の正体
ここ1〜2年で、SEOへの空気は明らかに変わりました。理由はいくつかあります。Googleの検索結果の上にAI Overview(AIが要約を表示する枠)が日本でも本格展開した。ChatGPTやPerplexityで「ググる代わり」をする人が増えた。検索結果のページ内で答えが完結して、どのサイトもクリックしない「ゼロクリック」が増えてきた。
数字もそれを裏付けています。Ahrefsのデータをもとにした分析では、AI Overviewが表示されるキーワードで、日本でもオーガニッククリックが約37〜38%落ちたと推計されています。なおAhrefs公式が公表しているグローバルの低下幅は、約58%です。ゼロクリックについても、海外調査ではGoogle検索のかなりの割合がクリックなしで終わっています。たとえばSparkToroの2026年の米国分析では、検索の68.01%がクリックなしで終わっている(米国データ)という結果が出ています。けっこうな割合ですよね。
この数字だけ見ると「やっぱりSEOやっても意味ないじゃん」と感じますよね。僕も最初は同じことを思いました。でも、データをもう1段細かく見ると、印象が変わってきます。
強く影響を受けたのは「情報収集型」の検索
ここからが本題です。強く影響を受けているのは、ざっくり言うと「ググって調べる」系の検索です。たとえばこういうのです。
「インボイス制度とは」「腰痛の原因」「Webマーケティング トレンド」。こういう「概要を知りたい」「まず広く調べたい」系の検索は、AI Overviewやチャット型AIが先回りして答えてしまいます。だから記事を読まなくて済む。情報収集を目的にしたメディア型のサイトは、ここで一気に流入を落としています。
一方で、相対的に影響が小さい検索もあります。「鹿児島市 整骨院」「霧島 ランチ おいしい」「鹿児島 税理士 起業」。地域+業種で店を探している人。買う気がある人。比較検討の最終段階にいる人。こういう「自分の地元で、誰かに頼む先を決めたい」検索は、情報収集型ほど影響を受けていません。今もGoogleマップのローカルパック(地図と店舗3件が出る枠)が出て、口コミと写真で判断する。AIがいくら要約しても、最終判断は依然として口コミ・写真・実在情報が強いんです。
ただし、ここで楽観しすぎるのは危ないです。ローカル検索が完全に安全地帯かというと、そうでもありません。最近はGoogleのAI Overviewがローカル系の検索にも入り始めています。とくに「比較したい」「相場を知りたい」「どこがいいか迷っている」といった検索では、従来の地図3枠の前にAIの要約が出ることが増えてきました。だから「ローカルSEOなら安泰」と考えるのではなく、地図・口コミ・写真・事例・会社情報を今のうちに整えておくことが大事です。AIが前に出ても、最終的に参照される材料は、結局そこだからです。
地方の中小企業にとって、むしろ追い風
正直、この変化は地方の中小企業にとってチャンス側に振れています。理由は3つあります。
1つ目。大手メディアやアフィリエイトサイトが、AI Overviewに食われて疲弊しています。大企業もコンテンツマーケティングへの投資を絞り始めた。ライバルが弱っている領域があるんです。
2つ目。「鹿児島 〇〇」のような地域指名クエリには、もともとAIも大手も入ってきません。月の検索数が数十〜数百件しかない。だから大手は本気で取りにいかない。でも地元の事業者からすれば、その月数十件の中に「実際に頼みたい人」が含まれている。CV率(問い合わせにつながる確率)はメディア型サイトとは比べものになりません。
3つ目。指名検索の価値が上がりました。会社名で検索される状態は、比較検討の最終局面で選ばれやすくなるだけじゃなくて、GoogleやAIにとっても「どんな会社か」を認識しやすくする土台になります。逆に言うと、ブランド名で誰にも検索されない会社は、見つけてもらう入口がそもそも狭い。指名検索は脳内SEOです。これを取れるかどうかが、今後の差になります。ただし、AIに引用されるかどうかは指名検索だけで決まるわけではないので、そこは過信しないでください。
SEO・MEO・GEOは別々に見えますが、土台はほぼ同じです
ChatGPTやPerplexityで調べる人が増えた、と聞くと、SEOとは別に新しい対策が必要に見えるかもしれません。でも実際には、地方の中小企業がやるべきことは大きく変わりません。会社名、住所、電話番号、営業時間、サービス内容、施工事例、お客さまの声、代表者やスタッフの顔。こうした情報を自社サイトとGoogleビジネスプロフィールで一貫して整えること。これがSEOにもMEOにも、そしてAIに見つけてもらう土台にもなります。小手先の「AI対策」より、まずは事業情報をきちんと揃える方が先です。
具体的な例で説明すると
たとえば、鹿児島市内で外壁塗装をやっている社長さんがいるとします。これまではチラシと既存客の紹介だけで回してきた。最近、新規が止まってきたので、ホームページとSEOを考え始めた。
5年前のやり方なら、こうでした。「外壁塗装 注意点」「外壁塗装 費用 相場」みたいな汎用記事を量産して、全国から流入を取って、地元の人だけ問い合わせにつなげる。でも2026年のいま、これはほぼ機能しません。AI Overviewが先に答えるし、大手リフォーム比較サイトに勝てない。
今のやり方は、こうです。まずGoogleビジネスプロフィールを徹底的に育てる。鹿児島市の地域指定で「外壁塗装」と検索されたとき、地図の3枠に入ることを狙う。次に、自社サイトに「鹿児島市〇〇区の外壁塗装事例」「鹿児島の塩害と外壁塗装」みたいな、地域に紐づいた具体的な記事を入れる。お客さまの声を実名・写真付きで載せる。これがGoogleやAIに「この会社は鹿児島で外壁塗装をやっている実在の会社だ」と認識させる材料にもなります。最後に、チラシやSNSで会社名を露出して、指名検索(「〇〇塗装 鹿児島」みたいに会社名で検索される状態)を作る。
このやり方なら、検索数は少なくても、来た人がほぼ問い合わせ予備軍になります。月50PVでも月3件の問い合わせ、みたいな世界が成立する。これが地方の中小企業が狙うべきSEOの姿です。
これからはPVより「問い合わせにつながる指標」を見る
AI Overviewやゼロクリックが増えた時代は、アクセス数だけでSEOの成否を判断しにくくなります。記事のPVが減っても、指名検索が増えたり、Googleビジネスプロフィールの閲覧数や経路検索、電話、問い合わせが増えるなら、それは成果です。地方の中小企業が見るべきなのは、月間PVよりも「会社名で検索された回数」「マップ経由の行動」「問い合わせ率」なんです。数字の見方を変えないと、伸びているのに「失敗」と誤解してしまいます。さっきの月50PVで3件の話も、PVだけ見たら寂しい数字に見えますが、問い合わせ起点で見れば立派な成果ですよね。
その前に、最低限の計測だけは入れておく
もう1つ大事なのが、改善に手をつける前に計測環境を整えておくことです。Search Console(Googleが無料で出している検索の分析ツール)が未設定だと、そもそも指名検索で何回表示されているのか、どの地域ページが見られているのかが分かりません。Googleビジネスプロフィールの管理画面とあわせて、最低限「指名検索」「地域名つき検索」「問い合わせページの到達」「マップ経由の行動」だけでも追えるようにしておいてください。そうすると、何を直したら効いたのかが見えるようになります。
今日からできること
いきなりSEO業者に頼むのは早いです。まず1つだけやってみてください。自分の店名や会社名を、Googleで実際に検索してみる。出てきた1ページ目に何が表示されているか、を確認するんです。
自社サイトのトップが先頭にあればOK。食べログやエキテン、求人サイトが先に出ていたら、自社サイトの最適化が足りていません。何も出ない場合は、そもそもGoogleにインデックスされていない可能性があります。Googleビジネスプロフィールが出るけど写真も口コミもスカスカなら、ここが最優先の改善ポイントです。
これだけで、自社のSEOが今どの状態にあるか、ざっくり診断できます。お金を1円もかけずに5分で終わる。指名検索で1ページ目を取れていない会社が、いきなり地域+業種キーワードで勝つことは、ほぼありません。順序があります。まず指名検索を整える。次にGoogleビジネスプロフィール。それから地域+業種のSEOコンテンツ。この順番を守るだけで、無駄なお金を使わずに済みます。
まとめ
2026年、SEOは「やる/やらない」の話じゃなくて「何のためにやるか」を決める年です。メディアっぽく記事を量産するSEOは、たしかに厳しくなりました。でも、地方の中小企業がやる「地域で見つけてもらう」「指名で選んでもらう」ためのSEOは、競合が減ったぶん、むしろやりやすくなっています。「SEOはオワコン」と言って手を引くのは、たぶんもったいない判断です。
「SEOやってるけど成果が見えない」「これから始めるべきか迷っている」——そういう状況なら、まず今のサイトとGoogleビジネスプロフィールを見せてください。何が足りなくて、何を直せば動き出すか、現状ベースで一緒に整理します。
気になるところ、まとめて答えます
AI Overviewやチャット型AIに自社サイトを引用してもらうにはどうすればいい?
「誰が」「どこで」「何をしている会社か」が分かるようにしておくことです。会社名・住所・電話番号・代表者名・実績・事例・口コミをサイト内に整理して載せる。AI時代ほど、こうした情報が整っているサイトは強くなります。SEOにも、AI経由の見つかりやすさにもプラスです。匿名のブログより、顔と所在地が見える地方の事業者のほうが、案外見つけてもらえたりします。
SEOとMEO(Googleマップ対策)は、どっちを先にやればいい?
地方の店舗・サービス業ならMEOが先です。SEOは効果が出るまで6〜12ヶ月かかりますが、MEOは3〜6ヶ月で動き出すケースが多い。費用も低く始められる。「鹿児島市 〇〇」で地図に出るところを取れたら、その後にSEOで補強する。この順番が一番ロスが少ないです。
SEO業者に頼むなら何を基準に選べばいい?
「上位表示を保証します」と言ってくる会社は外した方が安全です。Googleはアルゴリズムを誰にも開示していないので、保証はそもそも嘘になります。見るべきは、地域や業種に近い実績があるか、何をどう改善するかを言語化できるか、月額契約をやめても資産が手元に残るか。この3つを質問して、納得できる答えが返ってこない会社は避けたほうがいいです。