「ホームページはあるけど、問い合わせがほとんど来ない」—— 士業の方は紹介で仕事が回っているケースが多いので、Webでの集客にはあまり手をつけていない。でも最近、紹介だけでは新規が減ってきた。じゃあどうすればいいか。調べてみたら、コラム記事をコツコツ書いて相談件数を大幅に増やした事務所がいくつも見つかりました。
弁護士事務所の集客、何が難しいのか
弁護士の集客が難しい理由は明確です。「弁護士に相談したい」と思ったとき、ほとんどの人は知り合いに聞くか、弁護士ドットコムのようなポータルサイトを使う。自分で弁護士事務所のホームページを探して問い合わせるという行動は、まだ少数派です。
そうなると、ポータルサイトへの掲載費が集客コストの中心になります。ただ、最近は「ポータルサイト経由の反応が以前ほどではない」「依頼者の質が変わった」という声が業界内で増えています。掲載事務所が増えて競争が激しくなった結果、費用対効果に疑問を感じている事務所が出てきているということです。
もう1つの問題は、弁護士業務の特性。離婚、相続、交通事故——個人向けの案件は基本的に一度きりの関係です(企業法務や顧問契約のように継続する分野もありますが、ここでは個人案件中心の事務所を想定しています)。常に新規を取り続ける必要がある。紹介頼みだと、その流れが止まった瞬間に苦しくなります。
SEO強化で問い合わせ月1件→20件にした事務所
埼玉県の藤垣法律事務所は、SEO対策を強化して月の問い合わせが約1件から20件前後まで増えたそうです。約20倍。これはSEO支援を行ったMASA株式会社の事例紹介で公開されている情報です(出典)。
注意しておきたいのは、この成果は「コラム記事を書いただけ」で出たわけではないということ。内部SEO(サイト構造やCV導線の改善)、外部SEO(被リンク獲得)、そしてコンテンツSEO(記事制作)を組み合わせた包括的な施策の結果です。記事を書くだけで20倍になる、という話ではありません。
ただ、包括的な施策の中でも「専門分野の記事を継続的に出す」ことが集客の柱になっていたのは確かで、コンテンツの力が大きかったという点は変わりません。
ニッチ領域に特化して問い合わせ7倍にした事務所
東京のグラディアトル法律事務所は、少し違うアプローチで成果を出しています。ナイト系トラブル(風俗関連のトラブルなど)という、他の事務所があまり手をつけていないニッチな領域に特化してコンテンツを作り続けた。結果、2年でこの領域の問い合わせ数が月6件から44件——7倍以上になっています(出典:バズ部)。月30本の記事を継続的に出す体制を整えたのも大きかった。
ここで正確にしておきたいのは、グラディアトルは「広告をやめてSEOだけに切り替えた」わけではないということ。もともとポータルサイトへの広告依存度が高く、そこから脱却するためにオウンドメディアを強化した。つまりSEOと広告の両輪で回している。「広告費ゼロで成功した」という話ではなく、「広告に頼りすぎない集客チャネルを作った」という話です。
ポイントは「競合が少ない領域を選んだ」こと。弁護士業界のSEOは、離婚・相続・交通事故のような王道分野だと競争が激しい。でも少しずらした領域なら、質の高い記事を書くだけで検索上位を取れる可能性がある。そもそもの戦場選びがうまかった。
僕の見方だと、これは弁護士に限った話ではありません。「競合が多い王道キーワードで戦う」か「ニッチだけど確実にニーズがある領域を狙う」か。地方の事業者が取るべきなのは、後者の場合が多いです。
広告費ゼロで月4,400件超の問い合わせ。大手がやったのも結局「記事を書くこと」
規模は大きく違いますが、ベリーベスト法律事務所の事例も紹介しておきます。「リーガルモール」というオウンドメディアを立ち上げて、法律に関するコラム記事を約5年間書き続けた結果、月間約212万PV、月4,499件の問い合わせを達成しています。広告費はゼロ(出典:バズ部)。
ただし、これは2019年2月時点のデータです。現在の数値は公開されておらず、6年以上前の成果であることは把握しておいてください。検索アルゴリズムも競争環境も当時とは変わっているので、同じ規模の再現を期待するのは現実的ではありません。
とはいえ、この事例が示していることの本質は変わらない。大手だからできたんでしょ、と思うかもしれません。確かに記事の本数や体制は個人事務所とは桁違いです。でもやっていること自体は同じ。「検索する人が知りたいことを、専門家の立場でわかりやすく書く」。それだけです。
実際にクライアントの士業の方にも話しますが、Webは受け皿なんです。いい記事を書いて検索で見つけてもらう。読んだ人が「この人に相談してみよう」と思う。この流れを作るのに、事務所の規模は関係ありません。
成功してる事務所に共通する3つのこと
事例を横断して見ると、うまくいっている事務所には共通点があります。
1つ目は、分野を絞っていること。「なんでもやります」ではなく、「離婚なら」「交通事故なら」「ナイト系トラブルなら」と旗を立てている。検索する人は「自分の悩みに強い弁護士」を探しています。全方位型のサイトは、誰にも刺さらない。
2つ目は、地域名を入れていること。「弁護士 離婚」で全国の大手と戦うのではなく、「横浜 離婚弁護士」「鹿児島 相続 弁護士」のように地域を絞る。地方の事務所にとって、これが一番現実的な戦い方です。
3つ目は、半年以上続けていること。SEOの効果が出るまでには最低でも6ヶ月、安定するまでには1年かかるというのが業界の共通認識です。最初の3ヶ月で成果が出なくてやめてしまう事務所が多いですが、続けた事務所だけが結果を出しています。
鹿児島の士業で応用するなら
鹿児島の弁護士事務所や税理士事務所で同じことをやるとしたら、まず何から手をつけるか。僕がクライアントに勧めている順番はこうです。
最初にやるのは、自分の得意分野を1つ決めること。相続でも離婚でも企業法務でもいい。「うちはこれが強い」と言える分野を選んでください。
次に、その分野で検索されそうなキーワードをリストアップする。「鹿児島 相続 弁護士」「鹿児島 遺言書 作成」「相続放棄 手続き 期限」——こういった言葉で実際に検索してみて、上位に地元の事務所が少なければチャンスです。
あとは月2本のペースでコラム記事を書く。1本あたり2,000〜3,000文字。法律用語をそのまま使うのではなく、相談者の言葉に置き換えて説明する。「特別受益の持ち戻し」ではなく「生前にもらったお金は相続のとき考慮されるのか」という書き方です。
6ヶ月で12本。この12本があるだけで、検索経由の流入は変わり始めます。ただし、先ほどの藤垣法律事務所の事例でも触れたように、記事だけで劇的に変わるわけではありません。サイトの内部構造(ページ速度、CV導線、モバイル対応)が整っていることが前提です。記事は集客の柱ですが、受け皿となるサイト自体がしっかりしていないと、せっかくのアクセスが問い合わせにつながりません。
ポータルサイトの掲載費を払い続けるのも1つの手ですが、自社サイトにコンテンツを積み上げたほうが、長い目で見れば資産になる。どちらか一方ではなく、ポータルサイトで短期の流入を確保しつつ、並行して自社コンテンツを育てていくのが現実的です。
まとめ
弁護士事務所の集客で一番効いているのは、結局「自分の専門分野について、わかりやすく書いて発信すること」です。派手な施策ではありません。でも、半年〜1年続けた事務所は確実に成果を出している。地方の事務所ほど競合が少ない分、早く始めた人が有利です。
集客をポータルサイトや紹介に頼っていて、そろそろ自分でも動きたいと思ったら、まず今のサイトを見せてください。何が足りなくて、どこから手をつければいいか、一緒に考えます。