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食品ECで売上を作った会社が、自社サイト+SNS広告でやっていること

「ネットでも売りたいんですけど、楽天に出した方がいいですか?」——食品を作っている方から、この相談をけっこうもらいます。地元の加工品を全国に売りたい、というケースも増えました。ただ、いきなりモールに出すのが正解とは限らないんです。自社サイト+SNS広告で売上を作っていった会社を、何社か整理してみます。

結論から言うと、食品ECで伸びている会社は、いきなり楽天に出していません。まずInstagramと自社サイト(BASEやShopify)で小さく売れる形を作って、SNS広告を少しずつ育てて、利益が残ることを確かめてから規模を広げています。順番は「ストーリー→自社サイト→SNS→広告→モール」。この順番を守れるかどうかで、続くか続かないかが決まります。

食品の通販、市場は伸びているのにEC化率は低い

まず数字を1つ。経済産業省が2025年8月に公表したデータだと、個人向け(BtoC)の食品・飲料・酒類のEC市場は3兆1,163億円。金額だけ見ると巨大です。ところがEC化率は4.52%しかありません。物販全体の平均は9.78%なので、その半分以下です。

つまり食品は、まだネットで買われていない。理由はシンプルで、「実物を見て買いたい」「スーパーで済む」「送料がかさむ」あたりです。裏を返せば、伸びしろが大きい分野でもあります。家電やアパレルのように大手が押さえ切っていない。中小の食品事業者にとっては、まだチャンスが残っています。

ただ、伸びしろがあるからこそ「とりあえず楽天」だと、手数料で利益が消えることが多いです。食品はもともと利益率が低い商材。出店料も販売手数料も販促費も引いたあとに何が残るのか、先に計算しておかないと続きません。

事例①:Mr. CHEESECAKE — Instagram1本から月商200万円規模に

1つ目は、名前くらいは聞いたことがある方もいるかもしれません。「Mr. CHEESECAKE」です。元フレンチシェフの田村浩二さんが2018年に始めたチーズケーキのブランドです。

始まりはInstagramでした。自作のチーズケーキを投稿して、DM(ダイレクトメッセージ)で注文を受ける。2018年4月6日から28日までの初月で、売上は約90万円だったそうです。シェフがひとりで全部やっていた時期の話。

その後、BASE(ネットショップを無料で開けるサービス)に切り替えると、毎月の売上が約200万円規模まで伸びました。さらに2019年8月には自社のECサイト(Shopify)を立ち上げて、販売を本格化させていきます。

僕がこの話で大事だと思うのは、「Instagram DM → BASE → Shopify」という順番です。最初から立派なECサイトを作ったわけじゃありません。手元の道具で売れるかどうかを確かめてから、規模に合わせて器を大きくしていった。順番が逆だと、サイトだけ立派で誰も来ない、というよくある失敗に落ちます。

事例②:BASE FOOD — SNS広告とお客さんの投稿で伸ばした

もう1社は「BASE FOOD(ベースフード)」。完全栄養食のパンや麺を作っている会社です。

直近の売上は、2024年2月期が148.7億円、2025年2月期が152.4億円。数億円規模だった時期から、数年で100億円を超えるブランドになりました。やったことの中心は、創業時からFacebookとInstagramの広告を回し続けたこと。ターゲットは健康志向の30〜40代。最初は小さい予算でテストして、効果を見ながら少しずつ広告費を増やしていったそうです。

面白いのはここからです。広告で集めたお客さんが、自分のSNSに「ベースブレッド食べてみた」と投稿する。それを公式アカウントが許可を取ってリポストする。さらにその投稿を素材にして、広告の画像や動画を作り直す。このサイクルを回しています。

UGC(お客さんが自発的に作ってくれた投稿)を活用するツールを提供する会社が公表している事例では、この流れでCVR(購入率)が最大1.24倍、LTV(お客さん1人が生涯で使ってくれる金額)ベースのROI(投資回収率)が約380%まで上がったと紹介されています。ただ、これは中立の第三者調査ではなく、ツールを売る側が出している事例です。数字はそこを差し引いて読んでください。それでも、お客さんの「食べてみた」を広告に使う流れが効く、という方向性は間違っていないと思います。会社が作った宣伝より、ふつうの人の投稿のほうが信用される。当然ですよね。

成功している食品ECに共通する3つのポイント

2社だけだと偏るので、ヤッホーブルーイングとGREEN SPOONも合わせて見ていきます。ヤッホーブルーイングは「よなよなエール」などで知られるクラフトビールの会社で、昨期は2ケタ成長、過去最高の売上と利益を更新しています。GREEN SPOONは、もとはパーソナライズしたスムージーから始まって、いまは冷凍のヘルシーミール——弁当やスープ、サラダまで届けるブランドに広がりました。この4社に共通するポイントが3つあります。

1つ目は、自社サイトを「家」にしていること。楽天やAmazonは「賃貸」のようなもので、ルールが変わったり手数料が上がったりしても逃げ場がありません。お客さんのデータも自分のものにならない。売上の母艦は自社サイトに置いて、モールはサブに回す。この設計にしている会社が伸びています。

2つ目は、SNS広告を「育てて」いること。最初から月50万円を突っ込むのではなく、月3〜5万円から始めて、効果を見ながら少しずつ増やす。広告の素材も、お客さんの投稿を使うと、自社で気合いを入れて作るより刺さりやすいです。

3つ目は、商品にストーリーがあること。「誰が、どんな想いで、どう作ったか」を語れる商品じゃないと、SNS広告は刺さりません。値段とスペックだけで勝負するなら、それはAmazonの戦い方。中小の食品事業者がそこで殴り合うのは、正直きついです。

楽天が向く商品、向かない商品

ここまで自社サイト寄りに書いてきましたが、楽天が全部ダメかというと、そんなことはありません。ギフト需要が強い商品、すでに名前で検索されている商品、レビューが購入の後押しになる商品は、楽天のほうが早く売れることがあります。逆に、まだ知られていなくて、作り手の背景やストーリーを読んでもらわないと売れない商品は、自社サイトのほうが向いています。楽天は「探している人を取りに行く場所」、自社サイトは「ファンを育てる場所」。こう分けて考えると整理しやすいです。

コストの構造も知っておいてください。楽天は積み上がり式です。初期登録に6万円、標準的な「がんばれ!プラン」で月25,000円。ここに決済料、ポイントの原資、アフィリエイト、各種システム費用が乗っていきます。売上規模や広告の出し方によっては、年間で100万円を超えるコストになることも珍しくありません。粗利の薄い食品だと、この固定費と変動費の重なりがきつい。だから「楽天が悪い」ではなく、「自分の商品の粗利で、この構造に耐えられるか」で判断してください。

鹿児島の食品事業者が自社EC+SNS広告を始めるなら

鹿児島には焼酎、黒豚、お菓子、農産物、水産加工品と、ストーリーで売れる素材が揃っています。じゃあ何から手をつけるか。僕がクライアントに勧める順番はこれです。

最初に、商品の「ストーリー」を1つ決めます。「うちの黒豚はこの餌で育てています」「この焼酎は3代目の杜氏がこの蔵で仕込んでいます」みたいな、人と背景が見える話です。これがないと、SNSも広告も空振りします。

次に、自社サイトを作ります。いきなりShopifyでなくて大丈夫。BASEのスタンダードプランは初期費用も月額も0円で始められて、売れた分だけ手数料がかかる形です。ShopifyのBasicは月払い4,850円、年払いなら月あたり3,650円かかります。まずはBASEで小さく始めて、様子を見るのがいいと思います。

ここで料金の中身を少しだけ。BASEは月額0円ですが、手数料が「3.6%+40円」に、サービス利用料3%が乗って、合計で6.6%+1件あたり40円になります。この「1件40円」が、単価の低い食品だとじわじわ重い。Shopifyはカード決済料率が3.55%で、件数あたりの上乗せがありません。だから客単価3,000〜5,000円くらいの食品だと、手数料の差だけで月商10万〜13万円台からShopifyのほうが得になる計算です。テーマやアプリ、制作の外注費が乗れば、逆転はもう少し後ろにずれます。「月商30万円を超えたら」と一律で覚えるより、自分の客単価で一度試算してみてください。

サイトを作ったら、Instagramを週2〜3回更新して、まずファンを50人くらい作る。この段階では広告を出しません。投稿が反応をもらえるかどうか、ここで確かめます。

反応が出始めたら、月3〜5万円から広告を回します。ここで大事なのは、CPA(1人を獲得するのにかかるコスト)の相場を気にすることより、「いくらまでなら払っていいか」を自分で決めること。許容できるCPAは、初回の粗利と、2回目以降のリピートで戻ってくる金額から逆算します。1個3,000円で粗利1,000円の商品なら、初回だけ見れば赤字になる広告費でも、リピートで戻るなら成立します。逆に、リピートしない商品でCPAが粗利を超えたら、そこで止まります。

ありがちな失敗は、この順番を飛ばして、いきなり楽天に出すパターンです。固定費と手数料が先に出ていくのに、ファンがいないから売れない。先に自社サイトとSNSで「買ってくれる人がいる構造」を作ってから、認知を広げるためにモールを足す。順番を逆にしないでください。

売上より先に「利益が残るか」を見る

食品ECは、売上が立っても利益が残らないと続きません。原価、送料、梱包の資材費、決済手数料、広告費。ここまで全部引いたあとで、1件売れていくら手元に残るのか。これを先に出しておいたほうがいいです。

特に冷蔵・冷凍は送料の影響が大きいです。クール便は常温便より高い。広告のCPAだけを見て「獲得できてる」と喜んでいると、送料と冷蔵費で利益が消えていた、ということが起きます。見るべきは4つ。粗利、送料、冷蔵・冷凍の追加費用、リピート率。この4つを商品ごとに出すだけで、判断がかなり現実的になります。初回で赤字でも、2回目以降で回収できるかまで含めて設計すると、失敗しにくいです。

食品ECは「売る前の法対応」で詰まりやすい

ネットで食品を売るなら、商品ページを作る前に確認しておくことがあります。特定商取引法にもとづく表示です。販売価格、送料、支払い方法、商品の引き渡し時期、返品の条件、事業者の情報。これを載せる必要があります。ここが曖昧なまま売り始めると、あとから修正が増えて、運用が止まります。

食品は表示のルールも細かいです。原材料やアレルギー、消費期限の書き方など、確認しておくことが多い。そして鹿児島でよくあるのが焼酎です。酒類をネットで売るには、通信販売酒類小売業免許が必要になります。売る仕組みを作るのと同じくらい、法的に売れる状態を整えておく。ここを先にやっておくと、あとがスムーズです。

まとめ

食品ECは「商品×ストーリー×受け皿×広告」の組み合わせです。一気にやろうとせず、まずInstagramで小さく試して、売れる感触をつかんでから自社サイトを整える。広告はその後。この順番を守るだけで、続けられる確率がぐっと上がります。Webは受け皿でしかありません。届ける仕組みと、利益が残る設計をセットにして、はじめて回り始めます。

自社の食品を全国にネットで売っていきたい、でも何から始めればいいか分からない。そんなときは、いま手元にあるサイトやSNSの状況を一度見せてください。何を残して、何を作り直すか、商品と一緒に整理します。

気になるところ、まとめて答えます

自社サイトを作るなら、ShopifyとBASEどっちがいい?

最初はBASEでいいと思います。スタンダードプランは初期費用も月額も0円。売れた分だけ手数料(決済3.6%+40円に、サービス利用料3%が乗って、合計6.6%+1件40円)がかかる形です。ただ、この「1件40円」が、単価の低い食品だと効いてきます。Shopifyはカード決済料率3.55%で件数あたりの上乗せがないぶん、客単価と注文数によっては月商10万円台からこちらが得になります。ShopifyのBasicは月払い4,850円、年払いで月あたり3,650円。最初から完璧を狙わず、自分の客単価で試算して、伸びてきたら引っ越す前提でいいです。

食品ECで配送はどうしてる会社が多い?

冷蔵・冷凍が必要な商品は、ヤマトのクール宅急便が定番です。冷蔵だけなら日本郵便のチルドゆうパックもあります。常温でも、薄くて壊れにくいものなら、ゆうパケット(厚さ3cm・1kgまで)やネコポスで送料を抑えられます。ただ、厚みや重さの制限があるので、食品全部がこれで送れるわけではありません。送料は商品代に乗せて「送料込み価格」にする会社が増えています。送料別だと、カートに入れた瞬間に値段が上がって離脱されやすいので、価格を決めるときに送料の扱いをセットで考えてください。

SNS広告は月いくらから始められる?

Instagram広告は1日100円から出せます。ただ現実には、月3〜5万円くらい入れないとデータが溜まらず、良し悪しの判断ができません。最初の1〜2ヶ月はテスト期間と割り切る予算がいります。ここをケチって月5,000円で回しても、効果があるのかないのかすら分からないまま終わります。やるなら、最低限の予算を確保してから始めてください。

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