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旅館がOTA頼みをやめて、公式サイトから予約が入るようになった話

「じゃらんと楽天で予約は埋まってるんです。でも、手元にお金が残らなくて」。旅館やホテルの経営者から、この相談をもらうことが増えました。予約サイトの画面はにぎわっているのに、決算を見るとため息が出る。

OTA(じゃらんや楽天トラベルのような予約サイト)への依存から抜け出した宿は、実際に何をやっているのか。事例を調べてみました。

先に結論です。OTAは全廃するものではなく、新規のお客さんと出会う入口として残す。そのうえで「2回目からは公式サイト」に移す線を作る。差をつけるのは値引きではなく、お金が減らない特典です。

こんな状態なら、この先が役に立つと思います

まず、当てはまるかどうか見てみてください。

  • 予約は埋まっているのに、利益が伸びた実感がない
  • OTAの手数料が、売上の2割近くまで膨らんでいる
  • 泊まってくれた人の連絡先が、宿の手元に残っていない
  • リピートで来てくれる人が、なかなか増えない

2つ以上当てはまるなら、直す場所ははっきりしています。

旅館の集客、なにが難しいのか

OTAは、放っておいても新しいお客さんを連れてきてくれます。これは強い。ただ、その分のコストもかかります。

基本の手数料は8〜10%くらいです。じゃらんなら1名利用で実質8%(基本6%+ポイント負担2%)、2名以上で10%(基本8%+ポイント2%)。楽天トラベルは1名で7%、2名以上で8.25%ほど。ここにクーポンの負担や、上位に表示してもらうための販促プログラムの費用が乗ってくると、実質15〜20%になるケースが多いとされています。1泊2万円の予約なら、3,000〜4,000円が抜けていく計算です。

問題は手数料だけじゃありません。OTA経由だと、お客さんの連絡先が宿側に残らないんです。次にどう案内するかの手がかりがない。しかも価格の主導権もサイト側に握られがちです。日本旅館協会の令和5年度「営業状況等統計調査」では、予約経路はOTAが43.3%を占めるのに対して、自社サイト経由は14.4%でした。多くの宿が、いちばん利益の薄い経路に売上を預けている状態です。

予約経路を変えるだけで、利益はどれくらい動くか

数字にしてみると、この話はもっとはっきりします。

1泊2万円の部屋がOTA経由なら、手数料だけで3,000〜4,000円。仮に月30泊分がOTAから公式に移ったとすると、売上も客単価も同じまま、月9〜12万円が利益として残ります。1年なら100万円を超える計算です。

値引きをしたわけでも、部屋を増やしたわけでもありません。予約が入ってくる経路を変えただけ。これが直予約に取り組む一番の理由です。

事例①:アナログな手紙で、リピートを積み上げてきた旅館

石川県の山代温泉に、宝生亭という旅館があります。女将の帽子山さんは、複数のインタビューで「リピート率80%超」として紹介されている方です。

この数字は、中身を見ておいたほうがいいです。宿の資料によると、顧客全体の平均は40%ほど。85%というのは、秋の団体シーズンに来る地元のお客さんの数字でした。とはいえ、宿泊業のリピート率は一般に10〜40%と言われる世界です。特定の層とはいえ8割を維持しているのは、やっぱりすごい数字だと思います。

やっていることは、驚くほどアナログです。宴席で中心になっている人の連絡先をコースターに書いてもらって名簿にする。季節の挨拶状には話題になるネタを入れる。よく来てくれる常連さんには、家族写真を添えた手紙を送る。出産のお祝いの手紙まで送ることもあるそうです。

Webの話じゃないと思いますよね。でも本質は同じなんです。一度来てくれたお客さんと直接つながって、次もここに、と思ってもらう。OTAはこの「つながり」を作らせてくれません。宝生亭がやっているのは、OTAが持っていく関係性を、自分の手元に取り戻す作業です。

事例②:そもそもOTAに載せていない宿

もうひとつが、公式サイトを予約の中心に置くやり方です。

北海道の洞爺湖に、チャシバクINNという宿があります。OTAには掲載せず、公式サイトとGoogleビジネスプロフィール、電話とメールだけで予約を受けている。運営者自身が、その理由と開業までの過程をnoteで公開しています。規模は大きくありませんが、ちゃんとファンがついている宿です。

SNSから公式サイトへつなぐやり方も、考え方は同じです。写真で世界観を見せて、プロフィールやストーリーから公式の予約ページへまっすぐ流す。この一本道ができているかどうか。

大事なのは、SNSも口コミも、最後に着地するのが自分の予約ページだということです。僕がクライアントにいつも言っているのは、Webは受け皿だという話。どれだけ人を集めても、受け皿がザルだと全部こぼれます。逆に受け皿さえ整っていれば、OTAで宿を知った人が「公式のほうがよさそう」と自分から見に来てくれます。

うまくいってる宿に共通する3つのこと

事例を並べてみると、規模も地域もバラバラなのに、やっていることは似ています。共通しているのは3つあります。

1つ目。お客さんと直接つながる手段を持っていること。LINEでも手紙でも会員登録でもいいんです。OTAをまたがずに、次の案内を届けられる線を持っている。LINEはチェックインのときにスタッフが口頭で案内するのが一番効くとされていて、業界の記事では登録率3〜5割という数字も紹介されています。開封率も60〜80%と、メルマガの10〜20%とは桁が違います。

2つ目。公式サイトから予約するとちょっと得、という状態を作っていること。ここで値引きに走らないのがコツです。値段を下げると利益が削れますし、OTAとの価格競争にもなります。そうじゃなくて、アーリーチェックインやレイトチェックアウト、部屋のアップグレード、ウェルカムドリンクのような「お金を減らさない特典」を公式限定にするんです。

3つ目。OTAを敵にしていないこと。急にOTAをやめると、一時的に稼働が落ち込むリスクはよく指摘されます。ただ、直販の受け皿を先に整えてから全廃した宿では、その月も目標を超えて着地したという実例もあります。やめるかどうかより、やめる順序の問題なんです。まずはOTAを新規との出会いの入口として残して、2回目からは公式に呼び込む。この使い分けができている宿が強いです。

逆に、うまくいかない宿の共通点

失敗するパターンも、だいたい決まっています。

ひとつは順番の逆転。先に予約システムや広告に投資して、公式サイトはザルのまま走り出すケースです。次に値引き競争。公式限定で「〇%オフ」を始めるとOTAとの価格差が生まれて、利益率も落ちます。もうひとつがSNSだけ頑張るパターン。投稿は伸びてもプロフィールに予約導線がなくて、結局「いいね」で終わってOTAで検索され直す。

人が集まることと、予約が入ることは別物です。つなぐ線を先に作らないと、集客の努力がそのまま流れていきます。

始める前に確認しておきたい3つのこと

「よし、公式限定の特典を作ろう」となった方に、先に伝えておきたいことがあります。

1つ目はレートパリティです。OTAの中には「公式サイトや他のチャネルで、自社より安い価格や有利な条件を出さない」ことを契約で求めるところがあります。だからこそ、お金を減らさない特典で差をつけるやり方が理にかなっているんです。現金値引きではなくサービスで差をつければ、規約とぶつかりにくい。導入前に各OTAとの契約内容を確認してみてください。

2つ目は価格の表示です。公式とOTAで料金が違う状態は、見せ方によっては景品表示法上の「有利誤認」にあたるリスクがあります。金額は同じ、特典だけ公式限定。これが一番安全な設計です。

3つ目は個人情報です。コースターに書いてもらう名簿も、LINEの友だちも、手紙の送付先も、すべて個人情報です。取得するときに何に使うかを伝えて、同意をもらう。この手続きさえきちんとしておけば、アナログの施策も安心して続けられます。

鹿児島の旅館で応用するなら

鹿児島は観光の地力があります。2024年の延べ宿泊者数は約838万人で前年より2.8%増、外国人の宿泊は前年比71.5%増と、インバウンドも戻ってきました。2025年の速報値では、新燃岳の噴火や大雨の影響で延べ宿泊者が約828万人と少し減っていますが、外国人は約70万人まで増えています。指宿や霧島の温泉があって、離島もある。一度来てもらえれば印象に残りやすい土地です。だからこそ、リピートと直予約の設計が効きます。

最初の90日でやること

順番だけ言われても動きにくいと思うので、月ごとに区切ってみます。

1カ月目はGoogleビジネスプロフィール(地図に出る、あの無料の情報枠)です。写真と営業時間、基本情報を整えて、口コミの返信を週1回のルーティンにする。宿名で検索した人が最初に見る場所なので、ここが放置されていると公式サイトまでたどり着いてもらえません。

2カ月目は公式サイトの予約導線です。トップページから3クリック以内で予約画面まで行けるか、スマホでストレスなく入力できるか。実際に自分のスマホで最後まで進めてみてください。ここがザルだと、せっかく来た人がOTAに戻ります。

3カ月目はLINE公式アカウントです。無料のプランで始められます。チェックインのときに一言案内して登録してもらって、公式限定の特典を1つ用意する。

ここまでで直予約は動き始めます。予約システムや広告の話は、効果を見てからで十分です。

まとめ

旅館の集客でいちばん効くのは、派手な広告よりも「一度来た人ともう一度つながる線」を持つことです。OTAは入口として使いながら、関係性は自分の手元に取り戻す。ここが利益の分かれ目になります。今日、Googleビジネスプロフィールを開いて写真を1枚足すところからでいいので、始めてみてください。

予約は埋まっているのに利益が残らない。もしそんな状態なら、一度いまの公式サイトとGoogleビジネスプロフィールを見せてください。OTAから公式にお客さんを戻す導線の、どこが詰まっているか一緒に見つけます。

ここも気になるかも

OTAは全部やめたほうがいい?

やめないほうがいいです。OTAは黙っていても新規のお客さんを連れてくる集客力があります。狙うのは「ゼロにする」ことじゃなくて、依存度を下げること。OTAで出会った人を2回目から公式に呼び込む、という使い分けが現実的です。全廃した宿の例もありますが、それも直販の受け皿を整えるのに時間をかけたうえでの話でした。

OTA依存が8割を超えています。どこから手をつければいい?

全廃を目指さず、直販の比率を1割ずつ上げていく発想でいきましょう。まず公式限定の特典とLINEを整えて、「OTAで出会った人の2回目以降は公式へ」に切り替える。このとき、値引きではなくサービスで差をつけるのを忘れずに。レートパリティの規約に引っかかりにくくなります。

予約ボタンは作ったのに、公式から予約が来ません

理由の多くは、受け皿の作り込みが足りないか、価格や空室の情報がOTAより不便かのどちらかです。自分のスマホで検索するところから予約完了まで一連の流れを回してみてください。どこで手が止まるか、だいたい自分で気づけます。

自社予約システムって入れると高い?

規模によります。予約エンジンは月額数千円からのものもありますし、機能を盛れば当然上がります。小さい宿ならいきなりシステムを入れなくても、公式サイトの予約導線とGoogleビジネスプロフィール、LINEの3つを整えるだけで直予約は動き出します。まず土台、システムは後です。

手書きの手紙みたいなアナログ、今どき効く?

効きます。というより、みんながデジタルに寄っているからこそ効くんです。全員にやる必要はなくて、また来てほしい常連さんに絞ればいい。その手間が、そのまま「他の宿と違う理由」になります。

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