「そろそろうちのホームページ、作り直した方がいいのかな」——年度が変わるタイミングや、競合のサイトを見たあとに、こう相談をもらうことが増えました。結論から言うと、リニューアルすべきかどうかは「何年経ったか」で決めるものじゃありません。判断の軸は、別のところにあります。
僕も10年Web制作をやってきて、リニューアルしてよかったケースと、お金をかけたのに何も変わらなかったケースを両方見てきました。分かれ目は、タイミングを年数で測ったか、今のサイトで実際に起きていることで測ったか。ほぼここだけです。今日はそのへんを整理していきます。
「3〜5年でリニューアル」は目安にしすぎない
ネットで「ホームページ リニューアル 周期」と検索すると、3〜5年が目安、と書いてあるサイトが多いです。ただ、この数字をそのまま自社の判断基準にするのは、けっこう危ない。
根拠としてよく出てくるのが、日経225構成企業を調べた民間調査です。ある制作会社の独自調査では、平均リニューアル周期は5.5年、7年目までに約85%の企業がリニューアルしている、という結果が出ています。直近10年で見ると4.17年に縮まっていますが、これはコロナ禍でデジタル化を急いだ大企業の動きが大きく効いた数字です。
ここで押さえてほしいのは、これは公的な統計じゃなくて、大企業中心の民間調査だということ。日経225に並ぶような会社が5年前後で作り直しているからといって、鹿児島で店舗を1つやっている会社が、同じペースで動く理由にはなりません。
費用の面から見てもそうです。Web幹事の発注データでは、リニューアル費用の中央値は88.6万円、平均は138.2万円。これを4〜5年に1回ずつ払う体力が、地方の中小企業にあるかどうか。年数が来たから作り直す、というのは業者にとって都合のいい話であって、経営判断としてはほとんど意味がないんです。
本当にリニューアルすべき4つのタイミング
じゃあ、いつなら作り直す価値があるのか。僕がクライアントに勧めているのは、次の4つのどれかに当てはまったときです。
1つ目。スマホで見たときに、操作にストレスがある。総務省の令和6年通信利用動向調査では、スマートフォンの保有割合は個人で80.5%、世帯で90.5%でした。実際にサイトへ来る人のうちどれくらいがスマホかは業種によりますが、BtoCの店舗系だとモバイルからの流入が過半を占めて、7割前後〜7割超になるケースも珍しくありません。スマホで文字が小さい、ボタンが押しにくい、画像がはみ出る。このどれかに当てはまっていたら、年数に関係なく手を打った方がいいです。
2つ目。URLが「http://」のまま。「https://」になっていないサイトは、ブラウザ上で安全性に関する警告が表示されることがあります。これ自体で即アウト、というより、問い合わせフォームや予約フォームに個人情報を入力する場面で、不信感や離脱の原因になりやすい、という話です。SSL化だけで済むこともありますが、古い構造のままだと部分対応では追いつかないケースもあります。
3つ目。WordPressやプラグインが何年も更新されていない。WordPress 4.1〜4.6系は、2025年7月でセキュリティサポートが終了しました。古いまま放置したサイトは、既知の脆弱性を突かれて、改ざんや不正コードの埋め込みといったリスクが高まります。しかも安全性に問題が出ると、影響は検索だけにとどまりません。Google広告には改ざんサイトに関するポリシーがあって、脆弱なCMSが原因で広告の不承認や配信停止につながることもあります。
4つ目。サイトを「営業の道具」として使う気が出てきた。これが一番大事です。最初は会社案内代わりで作ったけど、問い合わせを増やしたい、求人を強化したい、商品をネットで売りたい——目的が変わったときが、本当のリニューアルタイミングです。
部分改修で済むケースと、フルリニューアルが必要なケース
ここは分けて考えた方がいいです。今挙げた4つのうち、スマホ表示の崩れ、SSL未対応、WordPressの更新停止みたいな技術的な問題だけなら、フルリニューアルまでいかず、部分改修で解決することも多いです。費用も数万〜数十万で収まる場合があります。
一方で、事業内容が変わった、採用を強化したい、問い合わせを増やしたい、ネット販売を始めたい——こんなふうに「サイトの役割そのもの」が変わるなら、これはフルリニューアルの検討対象になります。
線を引くポイントは、見た目の古さじゃありません。今のサイトの目的と構造が、これからやりたいことに合っているかどうか。ここで判断すると、あまり失敗しません。
逆に、リニューアルが不要なケースもある
これも正直に言っておきます。デザインが古いから、という理由だけなら、リニューアルにお金をかける価値はあまりないです。
うちでもよく聞かれます。「他社のサイトと比べて、なんか古臭く見えるんですけど、作り直した方がいいですか?」って。答えは「目的によります」です。
たとえば、すでにGoogleで自社名を検索した人が問い合わせをくれている。電話での指名も多い。リピート客中心で、新規はそこまで要らない。こういう状態なら、見た目を整えるだけのリニューアルの優先順位は低いです。
それより、写真を撮り直す、料金ページを更新する、Googleビジネスプロフィールを整える。このあたりの方が、はるかに費用対効果が高いことが多い。フルリニューアルは100万円単位の話です。同じ予算でやれることは、他にいくらでもあります。
リニューアルで一番やりがちな失敗
仮に作り直すと決めても、注意点があります。一番多い失敗は、リニューアル後にアクセスが激減することです。
原因はだいたい3つに集約されます。1つは、旧URLから新URLへの転送(301リダイレクト)の設定漏れ。これが漏れると、GoogleにURL変更を正しく伝えにくくなって、評価シグナルの引き継ぎが遅れます。結果として、順位や流入が落ちやすくなる。
2つ目は、制作中に入れていた設定の解除漏れです。noindexの指定、robots.txtでのブロック、ベーシック認証。このあたりが公開後も残っていると、検索エンジンに正しくクロール・インデックスされず、検索流入が大きく落ちることがあります。
3つ目は、コンテンツの雑な削減です。「ページが多すぎるから整理しよう」と、リニューアルのついでにまとめて消すパターン。価値の低いページを整理するのは、むしろ有効なこともあります。問題は、流入があるページ、被リンクがついているページ、指名で見られているページまで、中身を確認せずに消してしまうこと。ここを削ると、積み上げてきたSEOの資産を手放すことになります。
もう1つ、僕がクライアントに必ず言うことがあります。「デザインだけ変えても、問い合わせ数は変わりませんよ」と。見た目を新しくしても、人を連れてくる流れがなければ、サイトは来た人を受け止めるだけの箱のまま。リニューアル後もCVR(問い合わせにつながる割合)が動かず、お金をかけた意味がなかった、という相談、けっこう多いんです。
リニューアル前に、最低限見ておく数字
本格的に作り直す前に、最低限3つだけは確認してほしいです。
1つ目は、どのページが見られているか。2つ目は、どこで離脱しているか。3つ目は、問い合わせや電話につながっている導線がどこか。この3つですね。
ここが見えていない状態でリニューアルすると、見た目は新しくなっても、成果につながっていたページまで一緒に消してしまうことがあります。数字を見ずに勘で作ると、たいてい数年後にまた「なんか合ってない」と作り直したくなる。同じことの繰り返しになるんです。
鹿児島の中小企業がやるべき順番
じゃあ、地方の中小企業が現実的にどう動けばいいか。僕が勧めているのはこの順番です。
まず、今のサイトで致命的に困っていることだけをリストアップする。スマホで見られない、SSLが入っていない、WordPressが古い。このどれかが該当するなら、フルリニューアルじゃなくて部分改修で対応します。数万〜数十万で済むことが多いです。
次に、サイトに人を連れてくる流れを作る。Googleビジネスプロフィール、ブログ更新、口コミへの対応、必要なら少額の広告。ここに半年〜1年、時間とお金を使ってデータを集めます。どんなにいいサイトでも、届ける仕組みがなければ、そこに人は来ません。
そのデータを見てから、本格的なリニューアルに進む。誰が見ているか、どこで離脱しているか、どんな問い合わせが多いか。ここがわかった状態で作れば、勘で作るリニューアルとは仕上がりがまるで違います。
公開前に最低限チェックすること
リニューアルで本当に気を抜けないのは、実は公開日です。
旧URLから新URLへの転送が設定されているか。noindexやrobots.txtの制限が残っていないか。問い合わせフォームがちゃんと送れるか。GA4やSearch Consoleが正しく入っているか。この4つは、公開当日に必ず確認してみてください。
ここを見ないまま「作って終わり」にすると、トラブルに気づくのが数週間後になります。デザインの最終チェックも大事ですが、最後の最後は、こういう地味な確認の方がよっぽど効きます。
まとめ
リニューアルは、年数で決めない。スマホ、SSL、WordPress、そして目的の変化。この4つのどれかが引っかかったときが、本当のタイミングです。それ以外なら、リニューアルより先に手をつけることがあるはずです。
ホームページを作り直すべきか迷っている、業者から「そろそろリニューアルどうですか」と言われて判断がつかない。そういう状況なら、今のサイトを一度見せてください。本当に作り直す必要があるのか、部分改修で済むのか、そもそもサイト以外に手をつけた方がいいのか。現状を一緒に整理します。
ここも気になるかも
リニューアルの相場って、結局いくらが妥当?
Web幹事のデータでは、リニューアル全体の平均が138.2万円、中央値が88.6万円。コーポレートサイトの制作に限ると、平均95.6万円、中央値50万円というデータもあります。ここから現実的な目安を出すと、名刺代わり〜会社案内が中心のサイトなら50万〜100万円前後、集客や採用まで狙うなら100万円以上、というあたりで考えると大きく外しません。300万円を超える見積もりが出てきたら、その機能が本当に必要か、もう一度精査した方がいいです。
リニューアル中、サイトを止める必要はある?
基本的には止めません。新しいサイトを別の環境で作って、完成したタイミングで切り替えるのが一般的です。ただし切り替えのときは、URLの転送、フォームの送信、計測タグ、検索エンジン向けの設定。この4つの確認が必須になります。ここを業者任せにすると、後からトラブルに気づいても手遅れになりがちです。
自社で部分的に更新したい場合、WordPressのままがいい?
更新を自分でやりたいなら、WordPressが現実的です。ただし、テーマやプラグインの更新を定期的にやる前提での話。年に1〜2回しかログインしない、という運用なら、保守だけ業者に任せる契約をつけるか、もっとシンプルなCMSに変える方が安全です。放置されたWordPressが一番危ない、というのは、現場の感覚としてはっきりあります。